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第32話 逢瀬

Author: 文月 澪
last update Last Updated: 2025-09-02 15:59:39

 商店街を行く人々の視線が、チラホラと私達に向けられているのが分かる。こんなに人が多い所で話し込んでいたら気になるのも当然だ。

 ただでさえ夕方の商店街は人が多く、年齢層も幅広い。買い物に来ているのだろう主婦や、学校帰りの学生は、これから塾があるのかもしれない。少しずつ、会社帰りと思われるスーツ姿の人も増えてきた。

 でも、私の意識は目の前の先輩に注がれている。何か言いたげな先輩は、私の手を取るとポツリと呟いた。

「凜ちゃん、かっこよくなったよね。昔は泣いてばかりだったのに」

 そう言って笑う。

 (え? 昔って……)

 まさか、と目を見開く私に、先輩はずいっと顔を近づけてきた。

「ゆうちゃん」

 その一言に、私は呼吸が止まる。

(そんな……都合がいいこと、ある訳が……)

 私は心のどこかで、ゆうちゃんが先輩ならいいのにと思っていた。だって、私はゆうちゃんが好きだったから。

 だから、先輩がゆうちゃんであってほしいと思ったんだ。

「保健室で凜ちゃんが寝てるとき、ずっと呼んでたんだよ。覚えてる?」

 確かにあの時、ゆうちゃんのことを思い出していた。でもまさか寝言を言っていたなんて……しかも聞かれてしまったのは恥ずかしすぎる。

 羞恥心で顔が熱くなるのが分かり、私は俯いてしまう。

「顔真っ赤」

 からかうように覗き込んでくる先輩だけど、その瞳は柔らかく細められていた。その視線から逃げるようにして、顔を背けると、しつこく追いかけてくる。

「な、なんなんですか!? 先輩には関係ないでしょう!?」

 むきになって、つい思ってもいないことを口走ってしまった。その言葉を待っていたと言わんばかりに先輩は胸を張る。

「関係あるよ! だって、ボクがゆうちゃんだもん」

 ついに、先輩が確信を突いた。それは望んでいた答え。

 でも――。

「先輩が……ゆうちゃん……? それなら、何故言ってくれなかったんですか? 私もさっき思い出したばかりだから、文句は言えませんけど……教えてくれてもいいじゃないですか」

 そう問いかけると、先輩は眉を垂れて申し訳なさそうに応える。

「うん、ボクもさっき思い出したんだ。凜ちゃんが教室に帰った後、ボクも倒れちゃって。凜ちゃんが言ってた『ゆうちゃん』がきっかけだよ」

 先輩も、思い出した――?

「ボクさ、幼稚園でのこと、丸っと忘れてたんだ。だから凜ちゃんにも
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